Orgy way

アクセスカウンタ

zoom RSS チェーン;side大田 〜2006年3月14日〜

<<   作成日時 : 2006/03/14 00:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 田中が加奈子から電話を受けたのは、大学前の駅を降りたときだった。
「ああ大野さん、今ちょうど……え?」
「いいから!大至急児文研の部室へ来て下さい!」
「児文研って……ええ?また誰かのこと見てるの?」
「荻上さんが来てたのは知ってたんですけど、さっき笹原さんが部屋に入っていくのが見えたんです。ふふふ、これは楽しい事が起きる予感がしますよぉ」
「大野さん……あんまりソレばっか熱中しない方が……」
「何言ってるんですか田中さん!あたしは会長として神聖な部室を汚されないようにですね」
「……それなら直接現視研に行った方が確実でしょー?」
「いーから!もうっ、ノリの悪い人ですねえ」
 最後のセリフの途中から、加奈子の声がくぐもった。あ、マスクした……田中は確信し、サークル棟へ向かった。
 児文研のドアをあけると、すでに窓際にかがみこんでいる加奈子が見えた。他に人影はない。
「今日は大野さんだけなの?」
「さすがにこの時期学校にきてる人なんかそうそういませんよ、はじめから田中さんにしか声かけてません。それより早く早くう」
「……趣味わるいなあ」
「なんですか?」
「あっいや」
 主張もそこそこに、加奈子の隣にかがみこむ。向かいの棟の窓の奥、ポスターの隙間から見えるのは荻上千佳と、その奥に座る笹原完士だった。表情はまったく読み取れないが、体が動く様子で会話をしているということは判る。
「……実は、ちょっと荻上さんのことが心配だったんです。休みに入って何度か顔合わせてますけど、明らかに元気なかったし。笹原さんはお仕事が忙しいみたいで、あんまり会ってなかったみたいなんですよ」
「ああ、もう働かされてるんだってな」
「帰ってくる時間も遅くて、寝に帰ってるみたいなもんですって。荻上さんは平気なふりしてますけど、寂しいと思うんですよね……。わたしは田中さんでよかった」
 くるりと振り向いて田中に微笑む。マスクは早々に外したようだ。田中は加奈子に笑顔を返す。……いろいろな寂しさを知っているこの人は、人の寂しささえ許せないのだ。去年の夏、あの二人に何があったのかは後になってから加奈子が詳しく説明してくれた。
『荻上さん、本当によかったですね〜』
 目をうるませて自分に同意を促す加奈子の姿は、まるで娘を嫁にやる母親のようだった。そんなふうにからかっても、加奈子は平気な顔をして言ったものだ。
『だって、自分が認めてもらえるのはとても幸せなことじゃありませんか。わたしは田中さんに認めてもらえたから、次の誰かが認めてもらえるお手伝いをしてあげたかったんです。幸せが次の人につながっていくのも、また幸せなことですからね』
 いま加奈子は、その相手を見守っている。……ノゾキ行為だが。
「な、なあ大野さん、二人とも楽しそうじゃないか」
 加奈子の肩に手をかける。
「もういいだろ?そろそろあっち行って、冷やかしてやろうよ」
「しっ!」
「え?」
 加奈子は窓の外を凝視したまま肩の手を探り、握りしめる。
「あ……っ!」
「大野さんどうしたの……っうお!?」
 取り乱し始めた加奈子に異変を感じ、再び階下の窓を凝視する。
 現視研の窓の内側では、千佳が笹原に抱きついていた。
「な、なんという……笹原、やるなあ」
「……というより……やりすぎ……ですね、はは、あ、あんまり二人がエスカレートしないうちに行きましょうか?」
 言葉ではそう言いながら、加奈子はその場を動こうとしない。田中の手を握る力が増してきた。呼吸が荒くなる。
「そ……そうだよ大野さん、俺たちはデバガメ目的でここに来たわけじゃないんだ。あくまで彼らを見守るために、だな」
 笹原、そうだ、笹原はこの部屋のことを知っている。覗かれる可能性がある場所でまさかそんな……まさか……ええっ?
 加奈子が息をのんだ。田中の視界に入ってきたのは、笹原の腰にかがみこむ千佳の頭だった。
「(さ……っ)」
 あわてて窓に背を向ける。な……なにしてんだ笹原!?ウソだろ?
 肩越しに再確認する。笹原の膝の上では、千佳の頭がリズミカルに動いていた。笹原が彼女の髪をかき上げる。
「(笹原ぁーーーっ!!!)」
 俺にテレパシーが使えれば!田中は冗談抜きで願った。それがダメなら、俺じゃない誰かから奴に電話でもかかってくれないものか。
「まずいよ大野さん、さすがにこれは……大野さん?」
 震えながら握る手の力が強くなる。気分でも悪くなったか?大丈夫か……声をかけようと中腰になったとき、跳ね起きるように加奈子が立ち上がった。田中の背中に両手を回し、全体重を彼に預ける。
「んむうっ!?」
 田中の口を加奈子の唇が覆った。あたたかく湿った感触。
 加奈子は田中の唇を舌でこじあける。熱く甘い吐息が田中の口腔に充満する。
「……くはあっ」
 加奈子による蹂躙は永遠に続くかと思われた。堪らず唇を離し、空気を求めて喘ぐ。彼女の唇はさらに田中に追いすがり、二人は折り重なって床に倒れた。
「田中さん!田中さんっ…!」
 すすり泣くような囁くような、加奈子の声。甘く濡れた瞳。彼女の手が、何かを探し求めるように田中の体の上をさ迷う。胸に肩に脇腹に腰に。
「田中さん……わたし……わたし、もう……っ!」
 加奈子の手は目標を探り当てた。
 田中は彼女に気付かれないように、ひとつ小さく溜息をついた。児文研の入口を施錠していたことを思い出し、少し気が楽になる。加奈子の背中に手を回し、彼女を強く抱きしめた。
「(笹原……場合によっては恨むからな)」

 後に自分たちの勘違いに気付いた二人が、このことを誰かに話すことはなかったという。
 もちろん、田中が笹原を恨む筋合いも存在しなかった。


おわり

<別サイドの話も読む>

【あとがきなど】
2006/6/17、SSスレに投稿。

本編のほうで笹原と荻上さんを田中たちが覗いてたというネタを使用したんですが、「まてよ二人っきりで人のラブシーン覗いてたらあの二人どうなっちゃうんだ?」って考えてたら一気にストーリーができてしまいましたw
筋立てができた頃にはもうすっかり大野さんが攻めポジションに。ラストカットで田中が困ってるのは、大野さんを抱っコするのが嫌なのではなく、彼は恋愛関係においては極めて常識人なので『こんなところで』するのが嫌なのです。そらあ困るわな。


テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
チェーン;side大田 〜2006年3月14日〜 Orgy way/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる